塾選びのその前に、やっておくべきこと
「現在」に捕らわれ過ぎずに、「ゴール」をしっかりイメージして
「うちの子どもは、どんなタイプの塾に通わせればいいのですか?」。
そろそろ塾に通わせなければ…と思い始めたお父さん・お母さんなら、塾の何がどう違うのか?子どもにはどんな塾があっているのか?は、とても気になるところです。
しかし、塾を選ぶその前に「何のために塾に通わせたいのか?」という「目的」を明確にしておくことが大切です。ここでいう「目的」とは「ゴール」を指します。たとえば、「○○高校合格、○○大学○学部合格」といった「たどり着きたい未来」です。
学習相談の場でよくお聞きする「目的」には、「学習習慣をつくりたい」「定期テスト対策」、「苦手科目や単元の強化」などがあります。これに加えて「塾に行くことで叶えたい将来のゴール」を定めると、自ずといつからどんな塾に通わせるのが良いのかが見えてきます。
ゴールが決まれば、「学習計画」が作れる
わかりやすく大学受験を例に、目標達成までのプロセスを4つのステップに分けてご紹介します。
【Step1】
たとえば、難関国立大学と中堅私立大学を受験する場合では、受験科目数も違えば、難易度も変わるため、「必要な学習総量」が変わります。仮に東大・京大レベルともなれば相当な学習量が必要になります。
【Step2】
その必要な学習総量と、現在の学力を比較すれば、大小の差はあれ、必ずギャップが生まれます。
【Step3】
そのギャップを埋めるためには、「学習計画」を立てなければなりません。そこで必要なのは、いま足りない力は何なのか?を知ること。かけられる時間やお金を把握すること。どんな塾に通って何をどう勉強すればよいのか?を検討すること。そして何より大切なのは、「自分でどれだけ勉強できるか・するか?」を認識することです。
【Step4】
この学習計画に基づいて実行し、挫折しそうならモチベーションを高める施策も講じながら、自分の学力の面積を大きくして、ゴールとのギャップを埋めていくこととなります。
この「学習計画」を作るのは、塾の教室長の役割です。「塾に行くことで叶えたい将来のゴール」に向かって、そのギャップを測って学習計画を作ります。これは、中学・高校・大学受験の志望校合格という遠い目標であっても、定期テスト対策という近い目標であっても同じです。
※「学習計画」の考え方
・やるべきことの洗い出し
基礎の鍛え直し、覚えるべきを覚える、苦手科目や単元の克服、実践演習、模擬など
・ゴールまでに残された時間の把握
大学受験まで残り2年、期末テストまであと2ヵ月、部活は3年生の夏休みまで続けるなど
・かけられるお金を考える
・適したタイプの塾を選定or組み合わせる
集団塾、個別指導塾、家庭教師など
・学校・塾での勉強を念頭に、自宅ですべき学習とその方法を考える
学校の授業の予習・復習には、毎日必ず2時間は自宅学習時間を確保、塾で解けなかった問題は必ず反復学習など
学習計画づくりには、残された時間も大きく作用する
もう一つ、学習計画づくりのカギを握るのが、「残された時間」です。中学1年から意識する東大・京大受験と、高校1年からの東大・京大受験、自ずと対策は変わってきます。高1から考えるなら、「いまの生活を続けながら…」というワケにはいかないかもしれません。
一日の生活時間を見直して、自分で勉強する時間を少しでも増やす。たとえどんなにゲームが好きでも、その時間は減らすか諦めることも時には必要になります。
塾選びは、ゴールに向かって進むための一つの手段
塾に入っただけでは成績は伸びない
こうして、「受験対策」ひとつをみてもわかるように、塾に通わせることが受験対策のすべてではありません。「塾に入ったら、きっと成績が伸びるだろう。」ついつい、そう思いがちです。
たしかに塾に通うことは勉強をするきっかけになりますが、塾に通うだけ、で成績が伸びることはありません。塾と塾以外の要因が相乗効果で良い影響を及ぼすことではじめて、望む結果が得られます。
合格に必要な「学ばねばならない総量」は変わらない
また、中学受験では「子どもの習い事を辞めさせるべきか」という相談もよく受けます。どう考えてもこのままでは勉強時間が足りないと判断されるなら、習い事の時間を削るか、習い事をしたうえに勉強時間を積み増すことができるかを検討しなければなりません。
どんなに効率よく学習したとしても、合格に必要な「学ばねばならない総量」は変わらないので、その総量を確保するために、何かを「捨てる勇気」や、「残す覚悟」、「選択肢を広げる心の余裕」を持つことも必要です。
しかし、ギャップが小さく余裕があるお子さまなら、むしろ習い事を続けることが勉強の励みになることもありますので、受験か習い事かの二者択一ではなく、一人ひとりの状況に合わせて考えることが大切です。
「塾選び」のポイント
「塾選び」の重要な要素の一つは「教室長」
もうすでにお気づきの方も多いと思いますが、「塾選び」とは、「塾の教室長選び」でもあります。どれだけ親身になってサポートしてくれるのか? ゴールに必要な学びの総量を把握し、いま時点の生徒の実力を客観的に分析でき、期間、費用、子どもの性格や部活や習い事などの事情も考慮しながら、最適な学習計画を作ってくれるかどうか?
塾は、スペックが決まった製品やマニュアルに従ったファストフードのようなサービスではありません。必ず人が介在し、個別の事情に応じた対応が必要になります。ですから、「お互いの信頼関係」が欠かせません。
学習相談では、1時間程度はお話します。そこで教室長が話す説明に共感・納得できるか?「この教室長なら子どもを預けてもいい」と信頼できそうか?1時間程度話せば、相性も見えてきます。学習相談や体験授業の場では、そうした観点で教室長をチェックすることも大切です。
学習法や学習ツールの充実度もチェック
塾で選べる学習手段が豊富にあることも重要な要素です。受講スタイルや講座の種類が多ければ、より効果的に学習計画を組むことができるからです。
例えば、英語や数学の基礎は個別型でじっくり学んで、理科や社会は集団型でテンポ良く復習するなど、組み合わせることで学習効率が上がるだけでなく、費用を抑えることができるというメリットにも繋がります。
自習スペースが提供されているかも確認
家庭学習は、スマホやテレビなどの誘惑が多く、「ついついサボってしまう」「集中力が続かない」という悩みを持つお子さまも多いです。そんなときに活用したいのが、自習室などの自習スペースです。
静かで勉強に集中しやすい雰囲気が整っており、周囲の姿に刺激を受けて「自分も頑張ろう!」という学習意欲が向上します。授業以外の時間も有効活用できるため、自習スペースのある塾を選ぶことは、目標達成への近道としておすすめです。
学習相談は親子一緒に、直近の定期テストや模試の結果を忘れずに
学習相談に出掛ける際に注意すべき点が3つあります。
一つめは、
できるだけ親子一緒に参加しましょう。小学生・中学生に限らず、高校生でもその方が良いでしょう。なぜなら、親と子どもでそれぞれが思い描いているゴールが違うことがあるからです。親が思い描くゴールを押し付けることになると、子どもは反発を感じてしまいます。
二つめは、
必ず直近の定期テストや模試の結果を持っていきましょう。現時点の実力を知るためには重要な資料です。その結果を紐解くことで、苦手科目や単元、つまずいている箇所、どこまで立ち返った学習が必要なのか?といった理解度からの分析が可能になります。
三つめは、
学習相談には、2つから3つ程度の塾を回ってみましょう。1つでは比べられません。かといって行き過ぎると迷ってしまいます。どの教室長の説明が一番わかりやすかったのか?それぞれどんな点に納得し、違和感を覚えたのか?それらを俯瞰して比較検討し、「最も信頼できそうな塾」を選んでください。
塾を上手に活用するために
塾の役割と親の役割を切り分けて考える
最後に、塾を上手に活用するためのアドバイスをひとつ。
保護者さまの大切な役割は、学習に関する意見やアドバイスではなく、お子さまの「話を聞いてあげること」です。
【塾と保護者さまの役割分担】
そして、教室長と上手にタッグを組みましょう。具体的には、まず情報共有の徹底です。そして、お子さまに何かを伝えたい時には、教室長をスピーカー代わりに利用してください。
お子さまの様子は、こまめに教室長に連絡しておきましょう。そして、何か伝えたいことがあるなら、まずは教室長に相談してみてください。できる教室長なら、言葉そのままに伝えることなどせず、何をどう話すべきか、上手に咀嚼・消化して伝えてくれるはずです。
実はこのタッグは、教室長にとっても、よい環境づくりに欠かせないものです。お子さまには、教室長は自分のことをきちんと見てくれているという信頼感が生まれます。
信頼感が生まれれば、実はそれは親が子どもに伝えたかったことであったとしても、素直に耳を傾けてくれます。
特に、やる気を失っている時やスランプの時期には、親が直接口を出すと、喧嘩になりかねません。親には言いにくいことでも、教室長になら話せる。その伴走は大きな力になるはずです。